採血が上手くいかない人へ~採血のコツ その5~(少し上級編:採血で失敗する原因と対処法その2)

さて,前回の続きです.

前回は,血管に逃げられるときの対処法についてお伝えしました.今回は,

血管に当たるけど,途中から引けなくなることの原因と対策

について考えていきます.

途中で引けなくなる原因で多いのは,採血している途中に針が動いてしまうことです.少々のブレであれば針先は血管の中にとどまってくれるので問題ないことが多いですが,うっかり針を進めてしまうと血管を突き破ってしまいます.血管を突き破ってしまうと引けなくなってしまいます.さらに,血管を突き破ってしまうと血腫ができてしまい,ものすごく痛いし,次の採血の際にその血管が使いにくくなってしまいます.

採血をしている途中では,スピッツや引いているシリンジに意識が集中してしまいます.その時に針先がずれてしまいがちになるので,対策を考える必要があります.

この写真のように針を持つ手を宙に浮かしたままで,一生懸命固定しようとすると,どうしても針先はぶれてしまいます.

 

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これは,支点が針の一点のみであり,かつその針は簡単に動いてしまうことが原因です.つまり,採血中に針が動かないようにするには,「少なくとももう一点,どこか別の場所」を支点にすれば良いのです.

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そこで,僕は針を刺して逆血が来たら針を持っている手の人差し指の爪,中指の第一関節から第二関節のまっすぐなところ,薬指の第二関節を患者さんの皮膚に接触するように置きます.すると,針はそれ以上進みません.また,子供の採血をするときには,子供が不意に動いてしまうこともあります.そんなときも,手を患者の体に置いているのでしっかりとついていけます.これで少々患者が動いても最後までしっかりと採ることができます.

それ以外に,途中で引けなくなる原因としては,高度脱水状態の患者で採血の陰圧で血管がぺちゃんこになってしまった場合が考えられます.

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そんな時に,頑張りすぎるとせっかく採れた血も固まってしまうので早々に針を抜いて取れた分は検査に出してしまいましょう.

そして,採り直しの時には針一本で採血(通称ポタポタ採血)で挑戦しましょう.キモは血管の中の血を陰圧で引かずに,流れ出てくるままに採ることです.

この方法のメリットは血管にあたりさえすれば何とか採血ができるということです.デメリットは,凝固系などの正確な量が必要な検査の場合,既定の量が入っているのかが把握しにくく,せっかく頑張ってとれたのに検査できなかったなんてことが起こりうるということです.これで,採れなかったら諦めて医師に相談しましょう(本当に採血する必要があるのかも含めて).

どうしても,何が何でも採って検査しなくてはいけないとなったら医師に伝えて「動脈」から採血してもらうというのも一つの手段です.こればっかりは普通の看護師はできないので.